顎関節症とは
「あごが痛い」
「口が開かない」
「カクカク音がして痛い」
こんな症状はありませんか?
あなたの顎(がく)関節の自己チェック法
口を大きく開いたとき,人差し指から薬指を並べた3本指を縦にして入りますか?
(1.すっと入る 2.ほぼ問題ない 3.どちらともいえない 4.やや困難 5.全く入らない)
1. 口を大きく開け閉めした時,あごの痛みがありますか?
(1.全くない 2.たまにある 3.どちらともいえない 4.しばしばある 5.いつもある)
2. 口を大きく開いたとき,まっすぐに開きますか?
(1.いつもまっすぐ 2.たまに曲がる 3.どちらともいえない 4.しばしば曲がる 5.いつも曲がる)
3. 干し肉,するめ,タコなど硬いものを食べるとあごや顔が痛みますか?
(1.痛まない 2.たまに痛む 3.どちらともいえない 4.しばしば痛む 5.いつも痛む)
顎関節症の代表的な症状は,「あごが痛む(顎関節痛)」,「口が開かない(開口障害)」.「あごを動かすと音がする(顎関節雑音)」の三つで,このうち一つ以上の症状があり,鑑別診断で他の疾患がない病態を「顎関節症」といいます.
あごの関節の病気で最も多いのは顎関節症です.しかし,同じような症状を示す病気(滑膜性骨・軟骨腫症,咀嚼筋腱・腱膜過形成症,顎関節強直症,口腔癌・咽頭癌の咀嚼筋進展,智歯周囲炎,顎周囲炎,発作性神経痛など)も多くあります.鑑別診断と治療のためにはMRI検査が必要なことがあります
顎関節は手足の関節と同じような基本構造を持っていますが,異なる面も多くあります.顎関節は頭の骨(側頭骨)のくぼみ(下顎窩)に下あごの上先端の骨(下顎頭)が入り込む構造で,その間にクッションの役割をする関節円板という組織が挟み込まれています(図2).
関節円板はコラーゲンと呼ばれる線維のかたまりで,血管や神経がありません.開口時には下顎頭が下顎窩からさらに前に出るように動きます.また,閉口時には,下顎頭が下顎窩にはまりこみます.この動きは,四肢の関節にはない関節の動きです.この時,関節円板が,下顎頭と協調して開口時には前に移動したり,閉口時には後ろに戻ったりします.これは大きく口を開けて,食物を口に入れ,噛みつぶしていくとき,下顎頭を介して,側頭骨に力が過大にかからないように関節円板が協調して移動することにより,圧力を分散させる仕組みになっているからです.
関節円板は下顎頭の外側と内側にしっかりと付着していますが,前後方向の付着が緩いため,大きな力が持続的に顎関節に加わると,関節円板にズレ(転位)の生じることがあります.このズレの92%は前方で,8%が内外の側方,ごくまれに後方にも生じます.また,閉口時に関節円板にズレがあっても,最大開口時にはこのズレが戻る場合と,戻らない場合とがあります.戻る場合には開口時と閉口時に「カックン」と関節音がします.また,戻らない場合には,急性期には「口が開けられない」,「口を開けると耳の前が,とても痛い」などの症状がみられます