1.ばね指(狭窄性腱鞘炎)の症状
指を曲げた後、指が伸びなくなって曲がったままになり、伸ばそうとするとバネのように急に伸びる現象をバネ現象と呼んでいます。この現象はばね指の初期に特徴的な症状で、さらに進行していくと反対側の手で伸ばすのを手伝わないと伸びなくなり、無理に伸ばすと激痛をともなうようになります。この症状は親指に多く、次いで中指や薬指にもみられ、とくに中年女性に多いともいわれています。 |
2.ばね指の原因
ばね指の原因として、1)指の使いすぎと、2)老化の2つが考えられています。 |
1) 指の使いすぎ | |
仕事やスポーツなどで指を頻繁に使う人に発症しやすく、とくにパソコンの使いすぎや 草取り、編み物をした後に多く、またゴルフの練習をしすぎた後の薬指や小指にも多い といわれています。 | |
2) 老化 | |
年齢を重ねると屈筋腱と腱鞘の間のすべりが悪くなって腱鞘炎を起こしやすくなると考えられています。 また、比較的妊娠時や産後、更年期の女性に多いことからホルモンのバランスがくずれることがばね指の原因に関与していることも考えられています。 |
3. どうしてばね指になるの?
ばね指は指を曲げる腱(屈筋腱)がひっかかるためにおこります。この屈筋腱は手のひらから指に向かって走る腱鞘(腱が通るトンネルで、刀(かたな)の鞘(さや)ような役目をする)の中を行ったり来たりしています。指の使いすぎは屈筋腱自体のはれや、腱が通る腱鞘と呼ばれるトンネルに炎症が起こることになり、その結果腱鞘炎が起こるのです。この腱鞘炎が慢性化した状態がばね指と考えられます(図1 ばね指のイメージ図)。長い間、腱鞘炎が続くと指の根元の部分の腱が肥厚し、腱鞘が狭くなり、指の根元の部分を押すとひどく痛がられます。 |
4. ばね指の治療 |
1) 保存的治療 | ||
まずは手指の安静のため3週間ほど指の使用をひかえます。できるだけ痛い指を使わないように副木(添え木)や装具を装着することもあります。スポーツや趣味が原因として明らかな場合は、しばらくの間中止をします。またお湯で十分にあたため、寝るときには手袋をするなど血行をよくすると自然に治ることがあります。 | ||
2) 薬物療法 | ||
痛みをやわらげ、炎症を減らすために軟膏をぬったり、シップをはったりします。またステロイド剤を局所注射することにより軽快することがあります。ステロイド剤の注射は3回程度にすませるべきで、これでも症状がよくならない場合は手術などほかの治療法を考えるべきでしょう。 | ||
3)理学療法 | ||
急性期を過ぎてから消炎鎮痛を目的にレーザー治療や低周波マイクロウェーブで治療を行うことがあります。 | ||
4)手術治療 | ||
上記の治療で効果が得られない時や腱鞘炎の程度が強いときには手術が望ましいと考えられます。手術は局所麻酔で約1.5cm前後の皮膚切開をし、直下に現れた腱鞘を切開し広げる、約15分ほどの外来手術(腱鞘切開手術)を行います。手術後は翌日から指の運動を開始し、抜糸までの7~10日の間は感染しないように消毒に通院することになります。
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